ドクターズアドバイス 日頃の予防が大切!

ただの腰痛かどうかを見極めて、
適切な姿勢と筋力強化で予防を!

この先生に聞きました
テーラーメイドバックペイン クリニック 院長 松平浩(まつだいら・こう)

テーラーメイドバックペインクリニック
院長

松平 浩(まつだいら・こう)

順天堂大学医学部卒業。医学博士。元東京大学医学部附属病院22世紀医療センター特任教授。現在、福島県立医科大学医学部疼痛医学講座特任教授。腰痛治療・運動療法の第一人者として、テレビ出演のほか、『10秒から始める! 脊柱管狭窄症これだけ体操増補改訂版』(宝島社 TJ MOOK)など著書も多数。2023年より腰痛専門のクリニックを開院。https://www.tmbackpain.com

腰痛は悩む人が多いぶん、かえって軽く見られがちです。放置しないほうがいい腰痛の見極め方と予防の体操を、腰痛治療のスペシャリスト、整形外科医の松平浩先生に伺いました。

シニアならではの腰痛は早めの受診を

 もはや国民病ともいわれる腰痛。若い頃から日常的に症状があり、「病院に行くほどでもない」と思っている人も多いのではないでしょうか。腰痛の多くは、腰に負担のかかる姿勢の影響で、椎間板の中央にある髄核が一時的に傷ついたことなどが原因なので、大きな心配はありません。

 しかし、下記のチェックリストのような症状があれば、ケガや病気が原因の腰痛が考えられます。特に、シニア世代の腰痛には早めの治療が必要なものもあるので注意が必要です。

ケガや病気が原因の腰痛チェックリスト

転倒や尻もちをついた後などに痛み出し、日常生活に支障が出る。?骨折の可能性65歳以上(特に女性)で、ふとんから起き上がる際に背中や腰に痛みが出始めた。?骨粗しょう症(骨がもろくなる病気)による骨折の可能性。横向きでじっと寝ていても、腰がうずくことがある。鎮痛剤を使うと一時的に楽になるが、頑固な痛みがぶり返す。?がんの転移や背骨の感染症など、重い病気の可能性。痛みやしびれがお尻からひざ下まで広がり、毎日苦痛を感じる。?腰部脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアによる神経痛の可能性。腰痛に加え、肛門や性器周辺が熱くなる、あるいは、しびれる。尿が出にくい。尿漏れがある。?重症の腰部脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアの可能性。腰痛に加え、つま先歩き、かかと歩きが難しく、足の脱力がある。?重症の腰部脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、脳や脊髄の病気の可能性

このような症状があれば、「ただの腰痛」ではない可能性があります。早めに医療機関を受診し、医師の診断を仰ぎましょう。
※この場合、下で紹介している体操は控えてください。

注意したいシニア世代の腰痛

 例えば、背骨内部にある、神経や脊髄の通り道「脊柱管(せきちゅうかん)」が狭くなる「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」はシニア世代で目立つ症状です。また、女性は閉経後に女性ホルモンが減少することで骨がもろくなる「骨粗しょう症」によって、圧迫骨折を起こしやすくなります。

 これらの症状は人によっては「いつもより少し痛い」程度にしか感じないこともありますが、放置すると痛みが増して生活の質が下がるだけでなく、対策をしないと、いずれ要介護になる可能性もあります。

腰痛予防は、筋トレと適切な姿勢を心がける

腰痛になりにくい姿勢とは?

耳と肩が同じライン上にある。椎体(ついたい)、神経、椎間板(ついかんばん)、髄核(ずいかく)、棘突起(きょくとっき)。骨盤を立てて、お腹が出ていない状態

前かがみや猫背の姿勢を長く続けていると、本来は椎間板の中央にあるべき「髄核」という組織が後ろにずれ、「ぎっくり腰」や「椎間板ヘルニア」などの原因になります。上のイラストのように腰に負担の少ない姿勢を心がけましょう。

 予防法としては、腰周りや背中の筋肉を鍛え、いつも適切な姿勢を心がけることがおすすめです。このページで紹介している2つの体操にも、ぜひ取り組んでみてください。

 腰痛の大敵は「動かさないこと」。実は、できる範囲で動くほうが回復が早く、腰痛の再発率も低くなります。コルセットの常用や、腰をかばうがゆえの過度な安静は、筋肉が衰え、血流も悪くなり、かえって腰痛の悪化につながるので気をつけましょう。

腰痛予防におすすめの体操

  • 腰痛これだけ体操

    息を吐きながら上体をゆっくり反らし、3秒間キープしたら、ゆっくり元に戻す。
    回数:1~2回

    松平先生考案の「腰痛これだけ体操」を毎日行えば後ろにずれた髄核が元の位置に戻りやすくなるうえ、筋肉内の血流の改善にもつながります。

  • あごは軽く引く。胸を張り、左右のひじを近づける。両手をお尻の上に当てて、骨盤を押し込むイメージ。ひざはできるだけ伸ばす。足は肩幅よりやや広めに開く。重心はつま先に。
  • 背中の筋肉を鍛える体操

    あごを引きながら背中でクッションを押す。6秒間キープしたら、ゆっくり元に戻す。
    回数:10回×1セット

    背中の筋肉を鍛えることで正しい姿勢を取りやすくなり、腰の安定性が増して負担が減ります。少なくとも、1日1セット、週5回は続けましょう。

  • 背中に枕やクッションを入れる。背中のクッションを押すイメージ。足を組む。背筋を伸ばして深く座る。