ドクターズアドバイス たかが便秘と思わないで!

慢性便秘は寿命にも影響!?
生活習慣と食生活で対策を!

この先生に聞きました
国立長寿医療研究センター 副院長 松浦俊博(まつうら・としひろ)

国立長寿医療研究センター
副院長

松浦俊博(まつうら・としひろ)

名古屋大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。米国クリーブランドクリニックリサーチレジデント、名古屋大学医学部第一内科を経て、国立療養所中部病院(当センター前身)消化器科医長、国立長寿医療研究センター第一包括内科医長、消化器内科部長を歴任。2020年より現職。超高齢化社会における体に負担の少ない治療、発展を目標に診療を行っています。

便秘は、年齢を重ねるとさらにその人数が増えてきます。
実は多くの病気にも関連する便秘について、国立長寿医療研究センターの松浦俊博先生に伺いました。

そもそも便秘とは?

 私たちが食べたものは、胃で消化され、小腸で栄養分を吸収された後の残りが大腸に運ばれます。大腸内では水分を吸収し、直腸を経て便となって体外に排出されます。大腸の動きが悪く、なかなか便が運ばれなかったり、直腸に便が入った刺激を感じ取れずに、うまく排出できなかったりする状態が便秘です。

高齢になると男女とも便秘の人が増える!?

性別・年代別便秘者数 (人口1000人あたり)

厚生労働省 令和元年 国民生活基礎調査「性・年齢階級・症状(複数回答)別にみた有訴者率(人口千対)」より

15〜64歳で女性が多いのは、ホルモンの影響と腹筋が弱いことが関連しています。65歳頃からは、男女ともに運動不足と薬剤などの影響による便秘が増えてきます。

あなどれない便秘のリスク

 便秘はたいした問題ではないと思われがちですが、不要物である便が大腸内に長くとどまることのリスクは意外に高いものです。

 例えば、便秘でお腹が張ると少し食べただけでお腹がいっぱいになってしまいます。その状態が続くと、栄養の不足によりさまざまな機能が低下し、高齢者においては寝たきりなどのリスクが高まることに。また、腸内環境の乱れで悪玉菌が増え、糖尿病や高脂血症、動脈硬化などの生活習慣病につながることがあります。75歳以上で便秘が続いている人は、そうでない人より15年生存率が低いといった研究結果も出ています。

便秘体操とマッサージを習慣に!

  • 腹部ねじり運動

    仰向けに寝て両ひざを立て、息を吐きながらひざを倒して腸にひねりを加え、顔は逆に向けます。左右10回ずつくらいを目安に行いましょう。

  • 「の」の字マッサージ

    腸に外から刺激を加えるのも効果的。おへそを中心に、大腸の出口であるおへその左下まで時計回りに指をすべらせます。

便を出しやすい食事と腸を動かす工夫を

 便秘の改善には、食生活や運動など普段の生活を見直すことが必要です。1日3食決まった時間に摂り、朝食後は便意がなくてもトイレに行く習慣をつけましょう。トイレでは前かがみの姿勢を取ると、大腸から直腸までがまっすぐになり便が出やすくなります。

 また、腸の動きを良くするためには、ウォーキングなどの軽い運動をするのが効果的。寝る前には腹式呼吸や、上で紹介している便秘体操とマッサージもおすすめです。元気で長生きを目指すためにも、毎日スッキリ便が出る生活を心がけたいですね。

便秘を防ぐ食生活

  • 食事は規則正しく

    1日3食決まった時間に食事を摂ることが大切です。特に朝食は体内リズムを整え、胃や腸の動きを促すので便が出やすくなります。

  • 食物繊維を摂る

    便秘解消には便のかさを増やす「不溶性食物繊維」と、便を軟らかくする「水溶性食物繊維」の両方が必要。幅広い食品から摂りましょう。

  • 適切な量の水分を摂る

    水分が少ないと便が硬くなり、腸の中をスムーズに移動できなくなります。こまめな水分補給を心がけましょう。

  • 発酵食品を摂る

    ヨーグルトや漬物、納豆などの発酵食品は腸内環境を整え、便秘の改善や予防に役立ちます。毎日継続的に摂るのがおすすめ。