ドクターズアドバイス 恥ずかしいと思わないで!

生活の質を下げる尿トラブル。
日常でできる対策で改善しよう!

この先生に聞きました
福井大学名誉教授 金沢大学客員教授 春江病院泌尿器科非常勤医 横山修(よこやま・おさむ)

福井大学名誉教授
金沢大学客員教授
春江病院泌尿器科非常勤医

横山 修(よこやま・おさむ)

金沢大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。藤田記念病院、金沢大学附属病院等を経て、米国ピッツバーグ大学客員助教授、福井医科大学医学部教授、福井大学医学部附属病院腎センター長等を歴任。2022年より現職。日本泌尿器科学会元常任理事、日本排尿機能学会元理事長。著書に『大丈夫!何とかなります 過活動膀胱』(主婦の友社)等がある。

尿に関するトラブルは相談しづらく、1人で我慢してしまうことも。
原因と日常でできる改善方法を、泌尿器科医の横山 修先生に教えていただきました。

尿漏れのタイプ別に適切な対処方法を

意外に多くの人が悩んでいる尿トラブル。尿漏れは、50代で女性の4 割以上、男性の1割以上が経験したことがあるという調査結果もあります(※)。

※「本間之夫ほか:日本排尿機能学会誌 14(2),266,2003」より。

 トイレが近い、突然尿意を感じる、尿を漏らしてしまうといった尿トラブルは、加齢とともに悩みを持つ人が増えてきます。なかでも尿漏れにはいくつかの種類がありますが、特に多いのが咳やくしゃみ、重い荷物を持ち上げるなど、 おなかに力が入ったときに尿が漏れてしまう「腹圧性尿失禁(ふくあつせいにょうしっきん)」と、急に尿意を感じてトイレまで我慢できずに漏れてしまう「切迫性尿失禁(せっぱくせいにょうしっきん)」。この2つを併発している人もいます。

腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁、それぞれの対処法

尿トラブルのセルフチェックリスト

1.朝起きてから寝るまでに、排尿は8回以上ある。 2.夜寝てから朝起きるまでに2回以上、2 トイレに行くために起きる。 3.突然強い尿意を感じることがある。 4.急な尿意が心配で、外出しづらくなった。 5.急な尿意で我慢できず、尿が漏れてしまう。 6.冷たい水や物に触れたとき、尿が漏れてしまう。 7.流れる水の音を聞いて、尿が漏れてしまう。 8.咳やくしゃみ、大笑いをしたときに尿が漏れてしまう。 9.重い物を持つなど、力んだときに尿が漏れてしまう。

1〜2は頻尿、3〜4は尿意切迫感、5〜7は切迫性尿失禁、8〜9は腹圧性尿失禁です。当てはまることがある方は、一度、病院で相談してみましょう。

 腹圧性尿失禁は、骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)という膀胱や尿道を下から支えている筋肉が加齢などでゆるむことで起こるため、症状が軽いうちであれば骨盤底筋群を鍛えるトレーニングで改善が見込めます。

 一方、切迫性尿失禁は、尿があまり溜まっていないのに膀胱が過剰に反応してしまう「過活動膀胱(かかつどうぼうこう)」によることが多く、頻尿や夜間頻尿(夜間トイレに何度も起きる)の原因になります。

 このタイプは薬による治療が可能ですが、併せて毎日の生活の中でちょっとした工夫をすると効果が上がります。まずは水分の摂り過ぎに注意し、ウォーキングやマッサージなどで足のむくみを取りましょう。食事は塩分を抑えてなるべく薄味にし、コーヒーやアルコールは夜遅くまで飲まないほうが賢明です。

尿トラブルは我慢しない!気になる方は早めの受診を

 尿トラブルは他人には言いにくく、我慢してしまいがちですが、尿漏れが不安で外出や運動を避けるようになると、心身の機能低下につながることもあるので、早めの対処が必要です。思い当たる方は、かかりつけの内科や泌尿器科で相談をしてみましょう。

尿トラブルの予防と対策

  • 呼吸は自然に 足は肩幅に開く
  • 骨盤底の筋力を鍛える

    骨盤底体操で骨盤底筋群を鍛えると尿漏れや頻尿の改善につながります。5回を1セットとして1日に10セット行いましょう。尿トラブルの予防にもなるので、まだ症状が出ていない人にもおすすめです。

    全身の力を抜いてリラックス

    骨盤底体操

    肛門、膣の周りの筋肉を1〜2秒締めて、へそのほうへ引き上げるイメージで5つ数える。数えたらゆっくりと力を抜いて、5〜10秒ゆるめる。

  • 1日に摂る水分は体重の2%程度に

  • 水分の摂り過ぎは頻尿や夜間頻尿の原因となります。体重55kg の人なら1日1100cc程度を目安に、回数を分けて摂りましょう(※)。

    ※季節や生活シーンにより異なります。また、腎機能の低下を指摘されている場合は医師の指示に従ってください。

  • 足のむくみは寝る前に取っておく

    夜寝るときに横になると、足に溜まっていた水分が上半身へと移動して尿量が増えます。夕方以降に運動やマッサージなどで早めに水分移動を促し、トイレに行ってから寝るようにしましょう。