高めの血圧を下げるには 食事編

高めの血圧を下げるには、生活習慣の改善が必要不可欠です。特に、食事においては、減塩、野菜・果物の積極的な摂取、肉や魚卵などを控える、などがよいとされています。
今回は、具体的にどのような食品や食事のパターンがよいとされているかをご紹介します。

1.減塩のやり方

 「血圧が高め」の方は、1日の食塩摂取量を6g未満が推奨されています。この6gは、小さじ1杯の量で、例えば、おにぎりで約0.5g、みそ汁で約1.5g、梅干しで約2.2の食塩相当量が入っています。(出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂))おにぎりとみそ汁だけでも既に2gで、1日の摂取目標6gを3等分した場合には、1食分となってしまい、梅干しは1つだけで1食分の塩分となります。
少しでも塩気があると感じるものには、基本入っていると考えて、食事を作る際や食べる際に一工夫することをおすすめします。

食塩摂取量

1-1.味付けを工夫する

 塩分を控えるよういわれると、「薄味でおいしくない」というイメージをもたれる方も多いのではないでしょうか。しかし、料理の味付けは塩味以外にも、甘味、酸味、苦味、うま味などがあります。また、そもそも素材そのものの味を生かす、というやり方もあります。
例えば、香りも楽しめるこしょうや七味唐辛子などの香辛料を使用したり、薬味といわれる生姜やしそなどの香味野菜、ゆずなどの柑橘類などを使って味付けをすることで味を薄くしなくてもおいしい料理ができます。
また、調味料はむやみに使用せず、低塩のお酢やケチャップ、ドレッシングなどをうまく利用するのがよいでしょう。

素材の味や塩以外の調味料にも目を向けることで、料理のレパートリーも広がり食卓も楽しくなるのではないでしょうか。

香味野菜と減塩調味料

1−2.食べ方を工夫する

 食べる際にも一工夫することができます。
 例えば、お刺身や天ぷらのように、食べる直前に醤油や塩を使用する際には、「かける」のではなく適量を「つける」ことで塩分摂取を控えることができます。 また、まず「かける」のではなく、一度食べて味付けを試してから「かける」ことも一つです。

塩分の多めなラーメンやうどんなどの麺類は、1杯で塩分6gを超えてしまいます。そのため、できるだけ汁は残すようにしましょう。汁を全部残すことで、約2〜3gの減塩ができます。
食べすぎも要注意です。もちろん体重が増えるリスクもあるのですが、同じ味付けのものをたくさん食べることで、食塩摂取量が増える可能性もあります。
さらに、外食や加工品は、見た目にはわからない食塩が隠れているかもしれませんので、控えることをおすすめします。

尚、もし昼食で塩分を摂り過ぎてしまった場合には、夕食で控えるなど、1日のうちで塩分量を調整するように心がけましょう。

食べ方を工夫する

2.食事のパターンを見直す

 食事一つ一つの塩分を減らすことも大切ですが、根本から食事の内容・組み合わせを見直すことも重要です。塩分を摂らないようにするのとともに、取り込んだ塩分を排出するような栄養素を取り入れることを意識した食事法としたDASH食(Dietary Approach to Stop Hypertension)があります。
DASH食は、塩分を排出する働きのある3つのミネラル、カリウム、カルシウムとマグネシウム。そして、食物繊維とたんぱく質をたっぷりと取り、塩分や炭水化物を控えるという血圧が高めの方向けにアメリカで主に推奨されている食事法です。

  • (1)カリウム

  • 腎臓から塩分を排泄しやすくする働きがあります。

  • カリウムが多い食品:野菜・果物・大豆製品(ほうれん草、バナナ、小豆など)

  • (2)カルシウム

  • 血圧を安定させる効果があります。

  • カルシウムが多い食品:牛乳・乳製品(ヨーグルト、チーズなど)

  • (3)マグネシウム

  • 体内のさまざまな代謝を助け、血圧の調整にも役立っています。

  • マグネシウムが多い食品:種実類・藻類(アーモンド、ワカメなど)

  • (4)食物繊維

  • 脂質・糖・ナトリウムなどを吸着して身体の外に排出する働きがあります。

  • 食物繊維が多い食品:海藻や果物、穀類、豆類、野菜、きのこ類(ひじき、干し柿、ライ麦、納豆、ごぼう、きくらげなど)

  • (5)たんぱく質

  • 塩分の過剰摂取を防ぎます。

  • たんぱく質が多い食品:肉類、魚介類、卵類、大豆製品、乳製品(赤身肉、まぐろ、卵、豆腐など)

日本食

この5つの栄養を摂りながら、塩分を控えるDASH-sodium(ダッシュ-減塩)食が高めの血圧を下げるという報告がされています。
また、牛肉や豚肉を控え、オリーブオイルや乳製品を使った地中海食やベリー類、野菜、豆類、魚介類などを使った伝統的なノルディック食(北欧食)などもよいといわれています。
さらに、伝統的な和食もこれらの食事パターンに近く、減塩と組み合わせることで望ましい食事になります。

どの組み合わせや食品、食事パターンがいいのか、を覚えておくことで、家での食事だけでなく外食をした際にも気をつけることができます。自分の好きな組み合わせを覚えておくといいかもしれませんね。

5つの栄養素を含む食材
特定非営利活動法人日本高血圧協会 理事長島本和明

監修

島本 和明

日本医療大学総長、特定非営利活動法人日本高血圧協会 前理事長

北海道小樽市出身。札幌医科大学名誉教授。札幌医科大学第二内科教授、札幌医科大学附属病院長、札幌医科大学理事長・学長を歴任。 日本高血圧学会理事長、日本心臓病学会副理事長など、多くの学会で要職をつとめられ、現在も医学の更なる発展のために数多くの学会に精力的に参加。 北海道科学技術賞、日本高血圧学会栄誉賞、秋山財団賞など、他にも数多くの名誉ある賞を受賞。